SDGs 脱炭素 カーボンニュートラル 再生可能エネルギー発電促進賦課金 出力制御 卸電力市場 新電力ランキング 容量市場 取り巻く環境が大きく変化する電力業界 太陽光発電所の運営から電力小売制度まで、誰にでも分かりやすく解説します | エネルギートレンド

【2026年8月版】JEPXスポット単価が上昇|2025年比較とエリア別価格、今後の見通し

2026年7月後半から、JEPX(日本卸電力取引所)のスポット市場で電力の約定単価が上昇しています。特に東京・中部を中心に高い価格が続き、全国の基準となるシステムプライスも2025年の同時期を大きく上回りました。

本記事でJEPX公表データを集計したところ、2026年4月1日から8月2日までのシステムプライス平均値は15.51円/kWhとなり、2025年の同期間における10.63円/kWhから約46.0%上昇しました。

さらに、2026年7月単月の平均値は17.91円/kWh、7月20日から8月2日までの直近14日間では21.62円/kWhに達しています。

足元の上昇については、中東情勢の悪化に伴うLNG調達リスク、アジア向けスポットLNG価格の上昇、1ドル160円前後の円安、気温上昇による冷房需要の増加など、複数の要因が重なっていると考えられます。

結論から述べると、LNG価格の上昇と円安傾向が継続する限り、JEPXのスポット単価は当面高止まりする可能性があります。

ただし、電力価格は気温、発電所の稼働状況、太陽光発電量、地域間連系線の混雑などにも左右されるため、すべての時間帯・エリアで一律に上昇するわけではありません。

JEPX(日本卸電力取引所)とは?

JEPXは「Japan Electric Power Exchange」の略称で、日本国内の電力を取引する卸電力市場です。発電事業者や小売電気事業者などが参加し、翌日に受け渡す電力を売買するスポット市場や、当日の需給変化に対応する時間前市場などが運営されています。

スポット市場では、1日を30分単位に分けた48コマについて入札が行われます。売り手と買い手の入札を組み合わせ、各30分コマの約定価格と約定量が決定されます。

JEPXによると、スポット市場の約定方式は「ブラインド・シングルプライスオークション」です。参加者は他社の入札状況を確認できず、約定した取引は原則として同じ約定価格で成立します。

JEPX価格は、一般家庭が電力会社へ支払う電気料金そのものではありません。しかし、市場から電力を調達する小売電気事業者にとっては重要な仕入価格です。

市場連動型プランではJEPX価格が料金へ反映されるほか、固定単価型プランでも、卸電力価格の上昇が長期化すれば、将来の料金改定や契約条件の見直しにつながる可能性があります。

システムプライスとエリアプライスの違い

JEPXのスポット市場を見る際は、「システムプライス」と「エリアプライス」の違いを理解しておく必要があります。

システムプライスは、地域間を結ぶ連系線の制約を考慮する前に算出される全国共通の基準価格です。

一方、エリアプライスは、北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州の各エリアにおいて、地域間連系線の混雑や地域ごとの需給状況を反映した価格です。

全国で電力が余っているように見えても、需要の多いエリアへ送る連系線の容量が不足すれば、地域間で価格差が発生します。

また、火力発電の稼働状況、原子力発電所の運転状況、太陽光・風力の発電量、気温による需要差なども、エリアプライスを左右します。

そのため、全国平均のシステムプライスだけでなく、実際に電力を使用・供給する地域のエリアプライスを確認することが重要です。

2025年と2026年のシステムプライス平均値を比較

本記事では、JEPXが公表したスポット市場データをもとに、2025年4月1日から8月2日までと、2026年4月1日から8月2日までの30分コマ価格を単純平均しました。

2026年8月2日分は、前日に実施されるスポット市場で公表された受渡価格を含みます。

比較期間2025年2026年前年差前年比
4月1日~8月2日10.63円/kWh15.51円/kWh+4.89円+46.0%
7月1日~7月31日12.75円/kWh17.91円/kWh+5.16円+40.5%
7月20日~8月2日12.37円/kWh21.62円/kWh+9.24円+74.7%

2026年4月から8月2日までの平均値は、2025年の同期間より4.89円/kWh高くなりました。上昇率は46.0%であり、前年と比べて明確に高い水準です。

より注目すべきなのは、直近の動きです。

2026年7月の月平均は17.91円/kWhでしたが、7月20日から8月2日までの平均は21.62円/kWhまで上昇しています。これは、7月後半に価格上昇が加速したことを示しています。

ただし、JEPX価格は30分ごとに変動します。

昼間に太陽光発電量が増える時間帯は価格が下がる一方、夕方以降に太陽光の出力が減少し、冷房需要が残る時間帯は価格が上がりやすくなります。

月平均だけでは見えにくい、時間帯別の価格変動にも注意が必要です。

2025年と2026年のエリアプライスを比較

次に、2025年4月1日から8月2日までと、2026年の同期間におけるエリア別平均価格を比較します。

エリア2025年平均2026年平均前年差前年比
北海道10.31円/kWh14.02円/kWh+3.72円+36.0%
東北11.10円/kWh15.52円/kWh+4.42円+39.8%
東京12.40円/kWh19.56円/kWh+7.16円+57.8%
中部10.85円/kWh17.75円/kWh+6.90円+63.6%
北陸10.42円/kWh14.65円/kWh+4.23円+40.6%
関西10.39円/kWh14.60円/kWh+4.21円+40.5%
中国9.61円/kWh12.84円/kWh+3.23円+33.6%
四国8.77円/kWh9.31円/kWh+0.55円+6.2%
九州9.18円/kWh11.47円/kWh+2.29円+25.0%

すべてのエリアで、2026年平均が2025年平均を上回りました。

上昇率が最も大きかったのは中部エリアの63.6%で、東京エリアも57.8%上昇しています。需要規模が大きい東京・中部で高い価格が続いていることが、全国のシステムプライスを押し上げる要因の一つになっていると考えられます。

一方、四国エリアの上昇率は6.2%にとどまりました。

春から初夏にかけては、太陽光発電の供給が増えやすく、需要の少ない時間帯に低価格が発生しやすかったことが、期間平均を抑えた可能性があります。

しかし、2026年7月だけを見ると状況は変化しています。

四国エリアの7月平均は13.63円/kWhとなり、2025年7月の9.60円/kWhから42.0%上昇しました。九州も11.38円/kWhから15.37円/kWhへ35.1%上昇しています。

春季には比較的安かった西日本でも、夏季需要の増加に伴って価格上昇が広がったと見ることができます。

直近のJEPXスポット単価が上昇している4つの要因

JEPX価格は、単一の原因で決まるものではありません。

今回の上昇局面では、海外の燃料価格、為替、国内需要、発電設備や送電網の状況が同時に影響していると考えられます。

以下は、JEPXや官公庁などの公式情報を踏まえた筆者の推測です。

1.中東情勢の悪化でLNG供給への警戒感が高まっている

日本の電力供給では、LNG火力発電が重要な役割を担っています。

中東情勢が悪化すると、LNGそのものの生産だけでなく、ホルムズ海峡や紅海周辺を通過する輸送ルートへの警戒が強まりやすくなります。

資源エネルギー庁は、中東情勢を踏まえたエネルギー安全保障上の対応を公表しています。日本のLNG調達先は原油より分散されていますが、国際的な輸送リスクや供給不安が高まれば、アジア市場全体のLNG価格に上昇圧力がかかります。

経済産業省所管の独立行政法人JOGMECの2026年7月資料では、北東アジアのスポットLNG指標であるJKMが、6月末の1MMBtu当たり16ドル台後半から、7月24日には22ドル台前半まで上昇したとされています。

短期間で約3割上昇しており、LNG火力の追加調達コストを意識させる動きです。

JEPXのスポット価格は、需要を満たすために最後に必要となる電源の限界費用の影響を受けやすい市場です。

需要が増え、比較的燃料費の高いLNG火力の稼働が必要になれば、入札価格と約定価格が上昇しやすくなります。

2.LNG価格の上昇が火力発電コストを押し上げる

LNG火力の発電コストは、LNGのドル建て価格、為替、輸送費、発電効率などに左右されます。

JOGMECによると、財務省貿易統計をもとにした2026年6月の日本平均LNG輸入価格は、1MMBtu当たり11.13ドル、1トン当たり92,095円でした。

輸入LNGには長期契約も多いため、スポットLNG価格の上昇が直ちに、すべての発電燃料費へ反映されるわけではありません。

ただし、猛暑で想定以上に燃料消費が増えたり、既存契約だけでは不足して追加調達が必要になったりすれば、高いスポット価格の影響を受けやすくなります。

特に夏季は、発電事業者が燃料在庫と今後の需要を見ながら運用するため、将来の調達価格上昇や供給不安も入札行動に影響する可能性があります。

3.円安でドル建て燃料の円換算価格が上昇している

LNG、石炭、原油などの燃料は、国際市場では主に米ドル建てで取引されます。

そのため、燃料のドル建て価格が変わらなくても、円安になれば日本企業の円換算調達額は増加します。

日本銀行が公表した2026年7月31日の外国為替市況では、ドル円相場は9時時点で1ドル160.17~160.19円、17時時点で160.20~160.22円でした。

例えば、同じ100ドル分の燃料でも、1ドル150円なら1万5,000円ですが、1ドル160円では1万6,000円となります。

燃料価格と為替が同時に上昇すれば、円建ての調達コストは二重に増えます。

この円安が長期化した場合、JEPX価格だけでなく、大手電力会社の燃料費調整単価や小売電気事業者の調達コストにも、時間差を伴って影響する可能性があります。

4.気温上昇によって冷房需要が増えている

夏季の電力需要を押し上げる最大の要因の一つが冷房です。

気温が上昇すると、家庭のエアコンだけでなく、オフィス、商業施設、工場、物流施設などの空調需要も増加します。

気象庁は2026年7月31日、東日本と西日本の長期間の高温と少雨に関する情報を発表しました。

また、8月から10月の3か月予報では、北・東・西日本の気温が平年並みか高く、沖縄・奄美では高い見通しが示されています。

需要が増加しても、すべての発電設備が同じコストで稼働できるわけではありません。

原子力、水力、太陽光などで不足する分をLNG火力や石油火力などで補う場面が増えれば、限界的に必要となる電源のコストが高くなり、スポット価格が上昇しやすくなります。

特に、太陽光発電の出力が減少する夕方以降も高い気温が続く場合、冷房需要が残る一方で太陽光の供給が減るため、需給が引き締まりやすくなります。

夏のJEPX市場では、日中平均だけでなく、夕方から夜間の価格を確認することが重要です。

あわせて読みたい最新記事

東京・中部エリアの上昇が大きい理由をどう考えるか

2026年4月1日から8月2日までの比較では、東京と中部の上昇幅が目立ちました。

これは、両エリアの需要規模が大きいことに加え、高温による需要増加、利用できる発電設備の構成、他エリアから電力を受け入れる連系線の制約などが重なった可能性があります。

地域間で十分な送電余力があれば、価格の安いエリアから高いエリアへ電力が流れ、価格差は縮小します。

しかし、連系線が混雑すると、安い電力を追加で送れなくなり、需要地側ではより高い発電コストの電源を使う必要があります。

その結果、東京や中部のエリアプライスがシステムプライスを上回るケースが発生します。

一方、北海道では、2026年8月1日・2日の平均価格が前年同期を下回るなど、短期間では全国と異なる動きも確認できます。

JEPX価格の上昇を判断する際は、「全国的に上がっている」という一言だけでなく、地域、時間帯、比較期間を分けて見る必要があります。

JEPX価格の上昇は家庭の電気料金へどう影響する?

JEPX価格が上昇しても、すべての家庭の電気料金が翌月から同じ割合で上昇するわけではありません。

影響の大きさは、契約している料金プランによって異なります。

市場連動型プランでは、JEPXのエリアプライスや市場価格調整単価が電気料金へ比較的早く反映されます。

夏季の高価格が続けば、使用量の増加と単価上昇が重なり、請求額が大きく増える可能性があります。

一方、従量電灯や固定単価型プランでは、JEPX価格がそのまま請求単価になるわけではありません。

ただし、小売電気事業者の調達コストが長期間上昇すれば、新規受付価格の引き上げ、料金メニューの改定、ポイント還元の縮小、契約条件の変更などにつながる可能性があります。

また、燃料費調整制度を採用するプランでは、原油・LNG・石炭の輸入価格や為替の変化が数か月の時間差で反映されます。

JEPX価格と燃料費調整額は別の仕組みですが、どちらも燃料価格と為替の影響を受けるため、同じ方向へ動く局面があります。

今後のJEPXスポット単価はどうなる?筆者の見解

筆者は、2026年8月以降のJEPXスポット単価について、少なくとも夏の高需要期は高止まりしやすいと考えています。

第一に、中東情勢が不安定な状態では、LNGの供給量に実際の不足が発生していなくても、輸送リスクや追加調達への警戒からスポットLNG価格が上がりやすくなります。

第二に、円相場が1ドル160円前後で推移すれば、ドル建て燃料の円換算価格は高いままです。

第三に、8月も平年並み以上の高温となれば、冷房需要が継続します。

この3つが同時に続く場合、発電事業者の燃料費と小売電気事業者の市場調達費は下がりにくく、JEPX価格も前年より高い水準で推移する可能性があります。

一方で、価格が下落する要因もあります。

気温が予想より低下する、降雨や風況によって再生可能エネルギーの発電量が増える、停止中の大型電源が復旧する、LNG価格が下落する、円高へ転じるといった変化が起これば、スポット価格は短期間で下がる可能性があります。

JEPXは30分単位で需給を反映する市場であり、相場の転換も速い点が特徴です。

そのため、「今後も必ず上昇する」と断定するのではなく、LNG価格、為替、気温、発電所の稼働状況、連系線の混雑を継続的に確認することが重要です。

まとめ|LNG高と円安が続けばJEPX価格は当面高止まりの可能性

2026年4月1日から8月2日までのJEPXシステムプライス平均値は15.51円/kWhとなり、2025年の同期間の10.63円/kWhから46.0%上昇しました。

2026年7月単月では17.91円/kWh、7月20日から8月2日までの直近14日間では21.62円/kWhとなり、7月後半に上昇が加速しています。

エリア別では、東京が前年同期比57.8%上昇、中部が63.6%上昇しました。四国や九州も7月に入って上昇幅が拡大しており、夏季の価格上昇が広い地域へ波及しています。

足元では、中東情勢の悪化によるLNG供給への警戒、スポットLNG価格の上昇、円安、気温上昇による冷房需要の増加が重なっています。

これらは、いずれも火力発電のコストや電力需給を通じて、JEPX価格を押し上げる要因です。

LNG価格の上昇や円安のトレンドが継続する限り、JEPXのスポット単価は当面高止まりする可能性があります。

市場連動型プランを利用している家庭や事業者は、月平均だけでなく、利用エリアの30分単位の価格と、電気料金への反映方法を確認しておくことが大切です。

※本記事の価格は、JEPX公表の30分コマデータを筆者が単純平均した独自集計です。端数処理の関係で、JEPXが表示する月平均値などとわずかな差が生じる場合があります。将来の価格見通しは、公開情報をもとにした筆者の見解であり、実際の価格を保証するものではありません。

出典・参考資料

▶JEPX「スポット市場データ」の公式ページはこちら

▶JEPX「取引概要」の公式ページはこちら

▶資源エネルギー庁「中東情勢を踏まえた石油及び関連製品等に関する対応」の公式ページはこちら

▶気象庁「気象防災速報・気象解説情報等」の公式ページはこちら

▶気象庁「向こう3か月の天候の見通し」の公式ページはこちら

▶日本銀行「外国為替市況(日次)」の公式ページはこちら

▶財務省「貿易統計」の公式ページはこちら

▶独立行政法人JOGMEC「2026年7月 天然ガス・LNG関連情報」の公式ページはこちら

>未来のエネルギーを、今こそ本気で考える

未来のエネルギーを、今こそ本気で考える

エネルギー資源が限られた日本において、私たちがこれまでと変わらぬ豊かな暮らしを続けていくためには、新しい電力の「つくり方」と「使い方」を真剣に見直す必要があります。 環境への負荷を最小限に抑えながら、持続可能なエネルギー社会を実現する――それは国や企業だけでなく、私たち一人ひとりが取り組むべき課題です。 今こそ、再生可能エネルギーの可能性に目を向け、賢く選び、スマートに使う。その選択が、次の世代の未来を支える力になります。

CTR IMG