SDGs 脱炭素 カーボンニュートラル 再生可能エネルギー発電促進賦課金 出力制御 卸電力市場 新電力ランキング 容量市場 取り巻く環境が大きく変化する電力業界 太陽光発電所の運営から電力小売制度まで、誰にでも分かりやすく解説します | エネルギートレンド

生活直撃!2024年4月から電気代が大幅に引き上げ!どうすればいい?

2024年度スタート!電気代どうなる?

2023年度は、多くの人にとって大きな節目の年でした。なかでも印象的だったのは、新型コロナウイルスの「5類感染症」移行により、ようやく日常が本格的に戻ってきたことではないでしょうか。マスクを外した生活、人の往来の復活、イベントの再開など、コロナ禍以前の生活を取り戻したと感じた一年だった方も多いはずです。

そして2024年度が始まり、就職・進学など新生活を迎える人も多いこの時期ですが、同時に私たちの生活に直結する電気代の値上げという現実が迫っています。2024年4月からの電気料金の上昇は、一般的な料金改定とは異なり、国の制度変更によるものです。つまり、電力会社が独自に価格を引き上げているのではなく、国の方針や仕組みの変更により、自動的に電気代が上がる構造になっているのです。

今回の主な値上げ要因は以下の3つです:

  1. 再エネ賦課金の引き上げ
    再生可能エネルギーの普及を支えるために、私たちの電気料金に上乗せされている「再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)」が、2024年度から大幅に増額されます。この賦課金は、電気を使えば誰もが必ず負担する仕組みで、再エネの導入拡大に伴って年々上昇傾向にあります。
  2. 電気代の激変緩和措置が縮小
    政府はこれまで、燃料価格の高騰による家計負担を軽減するため、「電気・ガスの激変緩和措置」を講じてきました。しかしこの制度は2024年4月以降、段階的に縮小・終了する方針が示されており、その分の支援が消えることで実質的な電気料金の上昇につながります。
  3. 容量市場制度の本格導入
    さらに、2024年度からは「容量市場制度」が本格的に始まります。これは、将来的に安定供給を担う電源を確保するための仕組みで、発電設備の維持や整備にかかるコストをあらかじめ価格に反映させる制度です。この費用も利用者の電気料金に含まれることとなり、今後の新たなコスト負担要素として注目されています。

総務省が発表した2024年2月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比で2.8%の上昇を記録しており、生活に関わるコストが確実に増加していることが数字でも明らかになっています。春闘などで賃上げが話題になる一方、中小企業や一般家庭では実質的な賃上げが追いつかないという現状もあり、家計への圧迫感が強まっています。その中での電気料金の値上げは、生活コスト全体をさらに押し上げる要因となるでしょう。特に使用量の多い家庭や店舗、小規模事業者にとっては見逃せない影響です。

再エネ賦課金の増額

毎年3月は、電力業界にとって注目のタイミングです。というのも、再生可能エネルギー発電促進賦課金(通称:再エネ賦課金)の単価が正式に発表されるのがこの時期だからです。2024年度の再エネ賦課金は、1kWhあたり3.49円に設定されました。これは前年の1.40円/kWhから2.09円の引き上げとなり、実に約2.5倍に相当する大幅増額です。この単価は、2023年5月の検針分から2024年4月の検針分までの電気料金に適用されます。今回の改定により、再エネ賦課金は過去最高額を記録しました。ちなみに、2022年度は3.45円/kWhだった単価が、2023年度には1.40円/kWhに急減。その反動ともいえるかたちで、2024年度は再び大きな増加に転じる結果となりました。

再エネ賦課金単価推移

2024年度の再エネ賦課金が過去最高水準に引き上げられた背景には、少し聞き慣れない用語「回避可能費用」の変動が深く関わっています。回避可能費用とは、再生可能エネルギーによって発電された電力を電力会社が買い取ることで、本来なら火力発電や水力発電などでまかなうはずだった発電コストを節約できた金額のことを指します。簡単に言えば、「再エネを使ったことで他の発電をしなくて済んだ分の費用」というイメージです。この費用は、日本卸電力取引所(JEPX)の市場価格を基準に計算される仕組みになっています。つまり、

  • 市場価格が高騰すれば → 回避可能費用も上昇
  • 市場価格が下落すれば → 回避可能費用も低下

(計算式)
賦課金単価=(買取費用等-回避可能費用等+広域的運営推進期間事務費)÷販売電力量

3.49円/kWh=(4兆7,477億円-2兆1,322億円+10億円)÷7,707億kWh

2022年度における想定2023年度における想定2024年度における想定
(1)買取費用等4兆2,033億円4兆7,477億円4兆8,172億円
(2)回避可能費用等1兆4,609億円3兆6,353億円2兆1,322億円
(3)販売電力量7,943億kWh7,946億kWh7,707億kWh

この再エネ賦課金の増額分は実際にどのくらいの値上げになるのでしょうか?

●毎月350kWhの電気を使っている家庭の場合
2023年度 1.40円×350kWhで490円/月×12ヶ月となり、年間約6,000円になります。
2024年度 3.49円×350kWhで1,222円/月×12ヶ月となり、年間約15,000円になります。2023年度と2024年度の差額は約9,000円にもなります。

●毎月500,000kWh使用する高圧需要家の場合
2023年度 500,000kWh×1.40円×12ヶ月で年間840万円になります。
2024年度 500,000kWh×3.49円×12ヶ月で年間1,745万円になります。
2023年度と2024年度の差額は約900万円にもなります。

参考 再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2024年度以降の買取価格等と2024年度の賦課金単価を設定します (METI/経済産業省)

激変緩和対策の縮小

2024年4月時点で、私達が支払っている電気代とガス代は、国からの補助金によって値引きされている状況なのです。これは「激変緩和対策」と呼ばれています。要約すると、電気代が高騰して国民生活に影響が出てはいけないから、その分を補助しますということです。2023年2月からスタートし、1年以上継続しているのです。

低圧電力の具体的な金額は、2023年2月に7.0円/kWhからスタートしましたが、2023年10月に3.5円/kWhへ減額、2024年5月に1.8円/kWhに減額、2024年6月から完全終了となるのです。

低圧電力 激変緩和対策による補助単価推移

併せて、高圧電力の具体的な金額は、2023年2月に3.5円/kWhからスタートしましたが、2023年10月に1.8円/kWhへ減額、2024年5月に0.9円/kWhに減額、2024年6月から完全終了となるのです。

高圧電力 激変緩和対策による補助単価推移
●毎月350kWhの電気を使っている家庭の場合
2024年4月 3.5円×350kWhで1,225円/月の割引
2024年5月 1.8円×350kWhで630円/月の割引
2024年6月 割引無し

●毎月500,000kWh使用する高圧需要家の場合
2024年4月 1.8円×500,000kWhで90万円/月の割引
2024年5月 0.9円×500,000kWhで45万円/月の割引
2024年6月 割引無し

財源がある以上は、やむを得ないと理解はできるのですが、本当はこの値上げのタイミングで割引して欲しいという感情は間違いなく残りますね。

容量市場制度

2024年4月より、日本の電力制度において「容量市場制度」が本格的に導入されます。この制度は、将来の電力需要に備えて必要な発電能力(供給力)をあらかじめ取引・確保する仕組みであり、今後の電力供給の安定化を支える重要な政策のひとつです。容量市場制度の特徴は、現在の電力ではなく、4年後に必要とされる電源容量(供給力)を先に取引する点にあります。

まず、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が、4年後の電力需要のピーク(最大需要)を予測します。この予測には、気象変動や災害リスクなども考慮され、必要な電力の「目標容量」が設定されます。次に、この容量を確保するために、「4年後に電力供給が可能な電源」を持つ発電事業者を対象としたオークションが行われます。参加事業者は、供給準備にかかるコストを価格として提示し、最も安価な事業者から順に落札されていきます。

落札した発電事業者は、4年後に電力を安定的に供給できるよう、発電所の保守・点検・設備維持などの準備を整える義務を負います。これに対し、広域機関は発電事業者へ対価を支払い、供給能力を「確保された状態」として維持します。この容量市場の仕組みによって、小売電気事業者は将来の電源容量を確保するためのコスト(容量確保費)を広域機関へ支払う義務が発生します。この費用は、最終的に電気料金に転嫁されるため、私たち消費者の電気代にも影響を与える可能性があります。特に2024年度からは、容量市場関連のコストが本格的に電気料金へ反映されるため、制度の仕組みを正しく理解し、電気代の背景を知ることがますます重要になります。

資源エネルギー庁資料を参考に作成 容量市場制度

容量市場の仕組みを見ていると、「発電事業者と小売電気事業者の取引の話であって、私たち一般家庭には直接関係ないのでは?」と思われがちです。しかし、実際にはそうではありません。容量市場のコストは、最終的に私たち消費者が支払う電気料金に反映されるのです。

今から4年前、2020年に実施された2024年度供給分の容量市場のオークションでは、1kWあたり14,137円という非常に高い落札価格が設定されました。この価格は想定を大きく上回る水準であり、たとえば大手新電力の中には、数十億円規模のコスト負担を強いられるケースも出てきました。

こうなると、もはや企業努力だけで吸収できるレベルではなく、コストの一部または全部を電気料金として顧客に転嫁するしかない状況となったのです。問題は、容量市場で発生した費用をどのように電気料金へ反映させるかのルールが、電力会社ごとに異なるという点です。容量拠出金を明細に明記して加算する会社もあれば、基本料金や従量料金に上乗せして分かりにくくしている会社もあります。

そのため、同じ地域・同じ使用量であっても、契約する電力会社によって電気代に差が生じるという、一貫性のない価格体系になってしまっているのが現状です。

需要家向けの容量拠出金例

●高圧電力
Q,Enestでんき 800円/kW
シナネン株式会社 2.75円/kWh
秩父新電力 400円/kW

●低圧電力
新日本エネルギー 2.50円/kWh
シナネンでんき 2.75円/kWh
シン・エナジーでんき 1.65円/kWh
ハチドリ電力 2.35円/kWh
HTB Energy 136円/kW
Japan電力 248円/kW

独自リサーチにより作成(順不同)

資源エネルギー庁資料 くわしく知りたい!4年後の未来の電力を取引する「容量市場」

まとめ

2024年4月からの電力制度改定による電気代がどのように変化するかをまとめてみました。

毎月350kWh利用する家庭の月間増減額

検針月2024年3月2024年4月2024年5月2024年6月
激変緩和対策-3.50-3.50-1.800.00
容量拠出金 ※0.002.002.002.00
合計増減-2.10-0.103.695.49
増減額-¥735-¥35¥1,292¥1,922
※容量拠出金は2.00円/kWhと仮定

毎月500,000kWh利用する高圧需要家の月間増減額

検針月2024年3月2024年4月2024年5月2024年6月
再エネ賦課金1.401.403.493.49
激変緩和対策-1.80-1.80-0.900.00
容量拠出金 ※0.002.752.752.75
合計増減-0.402.355.346.24
増減額-¥200,000¥1,175,000¥2,670,000¥3,120,000
※容量拠出金は2.75円/kWhと仮定

今回の電気料金の上昇を受けて、実際にどのような影響があるのでしょうか?

一般家庭においては、月々の電気代が約2,000円、年間で約24,000円の負担増になると想定されます。これは光熱費全体に大きく影響を与える金額であり、家計の見直しが必要となる家庭も少なくありません。

さらに深刻なのが、高圧契約を結んでいる法人・施設への影響です。例えば月間使用量の多い製造業や大型商業施設では、月に約300万円、年間でおよそ3,600万円ものコスト増となる可能性があります。このような急激な電気代の上昇は、企業の経営を直撃し、生産コストの圧迫や減益リスクにつながる恐れがあります。電気代の高騰は、単なる「光熱費の問題」にとどまりません。企業側が上昇したコストを吸収しきれない場合は、製品価格やサービス価格に転嫁されるのが一般的です。その結果、食品、日用品、物流コストを含むあらゆる分野での物価上昇(インフレ)につながる可能性が高まっています。現在のところ、こうした影響が大々的に報道されることは多くありませんが、知らないうちに家計を圧迫する構造が進行していると言えるでしょう。

>未来のエネルギーを、今こそ本気で考える

未来のエネルギーを、今こそ本気で考える

エネルギー資源が限られた日本において、私たちがこれまでと変わらぬ豊かな暮らしを続けていくためには、新しい電力の「つくり方」と「使い方」を真剣に見直す必要があります。 環境への負荷を最小限に抑えながら、持続可能なエネルギー社会を実現する――それは国や企業だけでなく、私たち一人ひとりが取り組むべき課題です。 今こそ、再生可能エネルギーの可能性に目を向け、賢く選び、スマートに使う。その選択が、次の世代の未来を支える力になります。

CTR IMG