2024年夏到来
6月の梅雨が明け、7月に入ってからは全国的に本格的な猛暑が到来。連日30℃を超える地域も多く、エアコンなしでは過ごせない日々が続いています。もはや日本の夏においてエアコンは“命を守る家電”と言っても過言ではありません。
しかし、気になるのがその電気代。2024年5月までは国による「電気・ガス価格激変緩和対策」によって電気料金が抑えられていましたが、補助が終了した6月以降、急激な電気料金の上昇が始まりました。
実際、今年4月から容量市場の制度が始まり、5月には再エネ賦課金が大幅に引き上げられ、同月で電気料金補助も終了。値上げが集中した影響で、今夏の電気代が例年以上に高騰することが懸念されていました。
そんな中、政府は新たに「酷暑乗り切り緊急支援」として電気料金の補助を再開。これにより、家計負担の軽減が期待されます。一部では“選挙対策”や“ばらまき政策”といった批判の声もありますが、猛暑の中での光熱費支援に対して、安心したという声も少なくありません。今回はその補助の内容や対象、期間などについて詳しく解説します。高騰する夏の電気代対策として、ぜひ参考にしてください。
「酷暑乗り切り緊急支援」の内容
政府による電気料金の補助制度「酷暑乗り切り緊急支援」は、2024年8月使用分から10月使用分までの3ヶ月間が対象となります。この期間中は、家庭や事業者の電気代負担が一部軽減される予定で、夏の猛暑による光熱費の上昇対策として注目されています。急激な値上げが続く中、家計や経営の支援策として、電力利用者にとっては見逃せない内容です。
2024年8・9月使用分からの割引金額
低圧 4.0円/kWh
高圧 2.0円/kWh
※特別高圧の需要家は対象外
2024年10月使用分からの割引金額
低圧 2.5円/kWh
高圧 1.3円/kWh
※特別高圧の需要家は対象外

参考 電気・ガス料金支援
どれくらい安くなるのでしょうか?
具体的な例として毎月350kWhの電気を使っている家庭の場合を見てみましょう。
2024年8月 4.0円×350kWhで1,400円/月の割引
2024年9月 4.0円×350kWhで1,400円/月の割引
2024年10月 2.5円×350kWhで875円/月の割引
2024年11月 割引無し
1ヶ月あたり350kWhの電気を使用している一般家庭の場合、今回の「酷暑乗り切り緊急支援」によって、3ヶ月間で合計3,675円の電気料金が割引されます。「思ったより少ない…」と感じる方もいるかもしれませんが、電気代の高騰が続く中、少しでも光熱費の負担を軽減できるのは多くの家庭にとってありがたい支援といえるでしょう。
特にエアコンの使用が増える夏場に向けて、家計を見直すきっかけとしても注目されています。
次に、毎月500,000kWh使用している高圧需要家の場合を見てみましょう。
2024年8月 2.0円×500,000kWhで100万円/月の割引
2024年9月 2.0円×500,000kWhで100万円/月の割引
2024年10月 1.3円×500,000kWhで65万円/月の割引
2024年11月 割引無し
今回の電気料金支援策により、電力使用量の多い法人では、3ヶ月間で最大265万円の割引が適用されるケースもあります。エネルギーコストが上昇し、円安の影響で原材料費や運送費も高騰している現在、この補助は企業にとって非常に大きな経費削減効果をもたらします。特に製造業や大規模施設を運営する事業者にとって、夏場の電力負担を軽減できるこの支援策は見逃せない内容といえるでしょう。
参考までに
2024年8月から10月にかけて、家庭や年間契約量1,000万㎥未満の中小企業などを対象に、都市ガス料金の補助が実施されます。具体的には、8月・9月は1㎥あたり17.5円、10月は10.0円の割引が適用され、月に40㎥の都市ガスを使用している家庭では、3ヶ月間で合計1,800円のガス料金が軽減される見込みです。
電気だけでなくガス代も同時に支援されることで、家計や事業運営における光熱費負担の緩和が期待されています。
補助復活の背景
今回の「酷暑乗り切り緊急支援」として発表された電気料金補助は、事前の予告もなく、突然決定された印象を受けた方も多いのではないでしょうか。その背景を推測すると、2024年7月に入ってから全国的に電力使用量が急増し、電力予備率が当初の想定を大きく上回っていることが挙げられます。
このままでは、家庭の電気代が月2,000〜3,000円、企業では数十万円単位で上昇する可能性があり、国民の間で不満が爆発し、政府への批判が強まるリスクが高まっていたと考えられます。そうした状況を見越して、政府が先手を打つ形で補助金制度を再スタートさせた――というのが今回の動きの背景ではないかと推測されます。
どのように割引されるの?
今回実施される電気料金の補助制度では、国が小売電気事業者に対して割引分を補填し、電力会社が利用者(需要家)に直接割引を適用する仕組みとなっています。申し込み手続きなどは不要で、2024年8月の使用分から自動的に電気料金に反映されるため、特別な対応をする必要はありません。
また、この補助は大手電力会社(旧一般電気事業者)だけでなく、新電力を利用している場合でも同額の割引が適用されます。どの小売電気事業者を選んでいても対象になるため、契約先を問わず安心してご利用いただけます。
なお、請求書への記載方法は電力会社によって異なり、「政府支援」や「燃料費調整額からの減額」「需給管理費からの割引」など、表記方法に違いが見られます。注意点として、割引が適用されるのは8月使用分ですが、実際に請求に反映されるのは9月以降になるため、割引の実感には少しタイムラグがある点も把握しておきましょう。
もっと電気料金を下げるためには?
今回の政府による電気料金補助により、夏の光熱費が一時的に軽減されるのは嬉しいニュースです。しかし、物価上昇が続く今の日本では、「もっと電気代を節約したい」と考えるご家庭も多いのではないでしょうか。とはいえ、よく言われる「節電しましょう」という呼びかけに対して、多くの家庭ではすでにできる限りの節電対策を行っているのが実情です。実際、日本の1世帯あたりの電力消費量は2005年をピークに減少傾向が続いています。
これ以上の節電は限界がある――そう感じている方にこそおすすめなのが、「電力会社の乗り換え」です。電気の使い方を変えるのではなく、電気そのものの単価を下げることで、無理なく電気料金を削減できます。特に最近はJEPX(日本卸電力取引所)の市場価格も安定しており、料金水準が比較的安くなっています。これまで新電力への切り替えを検討したことがない方も、この機会にぜひ「電気代の見直し」を始めてみてはいかがでしょうか?賢く選べば、今よりもお得なプランが見つかるかもしれません。
まとめ
コロナ禍以降、続く物価上昇や円安の影響により、収入が増えないまま支出だけが増えているという家庭は少なくありません。筆者自身もその1人です。特に深刻なのが、電気代やガス代といったエネルギーコストの上昇です。では、この状況はいつまで続くのでしょうか?ファイナンシャルプランナーの視点から見ると、日本は大幅な利上げが難しいため、今後も円安傾向が続く可能性が高いと考えられます。すると、LNG(液化天然ガス)・石油・石炭といった輸入エネルギーの価格は上がりやすく、エネルギー価格の高止まりが長期化する恐れがあります。
国による電気代の補助金制度も一時的には助かりますが、財源には限界があります。いずれ税負担として私たちに跳ね返ってくるのは避けられません。だからこそ、今こそ個人レベルで“持続可能なエネルギー対策”を講じる必要があるのです。例えば、戸建て住宅にお住まいの方であれば、自家消費型の太陽光発電と蓄電池の導入が現実的な選択肢です。電力を自宅で生み出し、貯めて使うことで、電力会社から購入する高額な電気の量を大きく減らすことができます。
海外エネルギーに依存したままでいる限り、電気代の不安は終わりません。これからの時代は、家計を守るための“エネルギー自衛”が重要になってくるのです。