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太陽光発電所の運営は儲かるの?プロだけが知っている真実とは?

資産運用とは?

資産運用と聞けば、一部の富裕層に限った話のように思われますが、バブル崩壊後、低金利が続いたことにより、われわれ庶民にも資産運用が求められる時代になりました。また、人生100年時代と言われるようになり、年金だけでは十分な収入を得られないので、若い時から資産運用が活発に推進されるようになりました。今回は資産運用について少し触れたいと思います。

資産運用というと、株式投資(NISA)、FX、仮想通貨、不動産投資を連想する方が多いかと思いますが、実は太陽光発電所の運営という方法もあるのです。太陽光発電所の運営は株式投資とは異なり、事業的な要素が強く一線を画すところはありますが、設備投資をする事業という面で、一種の投資としての側面があります。各資産運用方法のリスク度合いと主なリスク要因を見てみましょう。

投資方法リスクリターンリスク要因
株式投資ハイリスクハイリターン株価の下落リスク・倒産リスク
FXハイリスクハイリターンロスカットによる損失リスク
仮想通貨ハイリスクハイリターン価格下落リスク、上場廃止リスク
不動産投資ミドルリスクローリターン空室リスク、金利上昇リスク
太陽光発電所運営ローリスクローリターン天候による発電量減少、出力抑制リスク
投資方法によるリスク・リターン

有名な話ですが、ヤフー株を上場当時に150万円で買って保有していた方は億万長者になっています。また、ビットコインも最初は1BTCわずか数円だったものが、今や600万円に達しています。逆にバブル崩壊やリーマンショックで全資産を失ったり、信用取引で破産した方もいます。このように株式投資や仮想通貨のような投資はリスクがある反面、夢のようなリターンを得ることも可能であり、実際に得た人もいます。それでは太陽光発電所の運営はどうでしょうか?売電収益が10倍、100倍を目指せるでしょうか?答えは「No」です。太陽光発電所の運営では大儲けをすることはできません。固定買取制度によって、電力会社が発電した電気を決まった単価で買い取ってくれますが、大儲けをすることはできません。ただ、言い換えますと電力会社が安定的に買い取ってくれる約束があるので、適切に運用していれば着実に収益を上げることが可能であり、破産リスクは限定的なのも魅力の一つです。

この記事では、太陽光発電所の運営を検討している人に向けて、事業用の制度設計から収益体系について詳しく解説していきます。

太陽光発電所の収益体系について

太陽光発電所の運営はFIT制度が始まった2012年から急速に広まり、戸建て住宅での屋根置き太陽光発電だけでなく、地上設置型の太陽光発電所の運営が企業や投資家などの間で人気が高まりました。

FIT制度とは、再生可能エネルギーの普及促進を目的として出来た制度で、認定を受ける事で、太陽光や風力で発電した電気を、家庭用は10年間、事業用は20年間固定単価で地域の大手電力会社に買い取って貰えるというものになります。太陽光発電のFIT価格は開始当初40円/kWhからスタートしましたが、毎年減少してゆき2023年では地上設置型(50kW未満)で10円/kWhとなっています。FIT単価が下がってしまったから儲けることができないのか?という点はまた別の機会にお話しができればと思います。さて、太陽光発電の収益体系を見てみましょう。20年間の売電収入からイニシャルコストと20年分のランニングコストを差し引いた金額が20年間の総利益になるのです。

20年間の総収益

●収入
売電収益:発電量(kWh)×固定単価(円/kWh)

●イニシャルコスト
モジュール(パネル)、パワーコンディショナー、遠隔監視システム、周辺設備、土地取得費用、施工費、連係負担金etc

●ランニングコスト
返済金(金利)、メンテナンス費、遠隔監視システムの通信費、保険費、償却資産税、固定資産税(土地取得の場合)、土地賃料(賃貸の場合)、廃棄費用積み立て、電気代etc

これだけ見てもよく分かりませんよね?それでは、実際にどのくらい収益を得ることができるのか実例をみてみましょう。

実例紹介

仮定条件
・パネル容量:(DC)50kW
・年間発電量:70,000kWh
・FIT単価(売電単価):18円/kWh
・運営期間:20年間

・メンテナンス費用:10万円/年
・遠隔監視システム:3万円/年
・動産保険:3万円/年
・固定資産税/償却資産税:9万円/年
・電気料金:1万円/年

表面利回り

システム費用:約1,200万円
売電収入:126万円
表面利回り:10.5%

●システム費用とはパネル・パワーコンディショナーを含めた機器類の総費用です。概算価格の算出方法は、資源エネルギー庁発表によると1kWあたり23.6万円と掲載されており、これにパネル容量(㎾)を掛け合わせることで求められます。(50kW×23.6万円/kWで算出)
●年間売電収入の計算は年間発電量×売電単価で求められます。(70,000kWh×18円/kWhで算出)
●表面利回りは年間売電収入÷初期投資費用で求められます。(年間売電収入126万円÷初期投資費用1,200万円)

これで計算すれば、表面利回りは10.5%!利回りが10%超えとなれば相当良い資産運用になると思うかもしれません。しかし、実際には維持するためにはメンテナンス費用などの諸経費が発生しますので、これだけの収益が手元に残るわけではありません。よく広告に利回りを掲載されているのを見かけますが、表面利回りで記載されているので、実際には経費がいくら必要かを考慮し、慎重に判断しなければなりません。それでは実際にどれくらいの収益が手元に残るのかをシミュレーションしてみましょう。

実質利回り

システム費用:約1,200万円
売電収入:126万円
経費総額:26万円/年間
年間収益:100万円
実質利回り:8.3%

メンテナンス費用:10万円/年、遠隔監視システム:3万円/年、動産保険:3万円/年、固定資産税/償却資産税:9万円/年、電気料金:1万円/年の場合、年間の経費総額は26万円となります。(年間売電収入ー年間経費)÷システム費用で求めますので(126万円‐26万円)÷1,200万円で実質利回りは8.33%と算出されます。

実質利回りが8.3%!やはり高利回りですね。20年間安定的に8.3%で運用できるとするならば、理想的な試算運用になるのではないでしょうか。しかし、実は注意しておかなければならない点があります。約10年でパワーコンディショナーが寿命を迎えます。その場合、5㎾で約20万円しますので、パワーコンディショナーを実費で交換した場合の費用を想定しておかなければなりません。さらに10年後からは廃棄費用の積み立てが始まります。およそ1kWhあたり0.5円~1.5円の金額を毎月徴収されます。これも想定しておかなければならないのです。

さて、今回のシミュレーションは現金一括払いの場合となり、ローンを組んだ場合には、別途返済金や金利が発生しますので、さらに実質利回りは下がります。銀行・政策金融公庫から融資を受ける方、信販会社のローンを活用される方も多いでしょうから、ローン利用時の運用利回りは事前にキャッシュフロー計算を綿密に行わなければなりません。

資源エネルギー庁 太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度について

まとめ

資産運用に対する考え方は人それぞれですが、最終的にはリスクとリターンの天秤にかけて、自分の資産がいくら増えるかが判断基準になるでしょう。太陽光発電事業は億万長者を目指して大きなリスクを取りながら運用したい方には向かないかもしれません。固定買取制度を活用して安定して手堅く20年間運用したいと考えている方には魅力的とご理解してもらえたのではないでしょうか。太陽光発電所の運営は決して楽ではありません。心配ごとも多く私自身も悩みながらも日々運営しています。しかし同時に面白さもありますので、これからも発信を続けてゆきたいと思います。

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これからのエネルギーを真剣に考える

日本というエネルギー資源の乏しい国で、今まで通りの暮らしを送るために何をしなければならないのか?環境に配慮した電気の作り方、賢い電気の使い方をわれわれ一人一人が考えてゆかなければなりません。

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